徒然日記 〜通訳案内士、ふたたび〜

コロナ禍休業を経て、通訳案内士業に復帰。7年暮らしたソウルが第2の故郷(22年3月帰国)。中学生の母。ミニマリストに憧れている。

カテゴリ:ソウル生活 > 地方旅行

釜山ビエンナーレ2020、心に残ってもう1度じっくり観たいなと感じる作品について、ランダムなメモ。
(作品はすべて公式ウェブサイト上で閲覧可能。なかなかにわかりにくいのだけど笑、会場を選び、番号をクリックすると出てくる)

1. KIM Ayoung, At the Surisol Underwater Labo (@BNK Busan Bank Art Cinema) (Old Town9)
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会場が元銀行を改装したアートシネマのようなのだけど、閉館間近だったからかそういう演出なのか、とにかく暗くてひとがいなくて、会場の力がまず大きかった。

この作品、小さな部屋にスクリーンが置いてあって、床に直置きになってるクッションに座って鑑賞することができる。

舞台は未来の地球らしく、長い眠りから覚めた中東風の女の子がラボに座り、機械?AI?と話をしながら、地球の状態を確かめている。概ね各種数値は良好で彼女は満足そうなのだけど、異様な数値を示している箇所を詳しく観察していくうちに、彼女の様子が変化していく。そこはウイルスに侵されたあとの韓国で、マスクをしながら生活を送るひとびとの様子が映し出されていく。

彼女がパニックに陥っている様子なのだけど、何が起こっているのかがよくわからなかった(時間があれば最初からもう1度しっかり見たかった!残念。。)。ただ、スクリーンに映る全員マスク着用の韓国の街の様子はあきらかに異様で、あらためて、自分たちが今置かれている状況を目の当たりにした感があった。

加えて、この作品の舞台設定が(ラボから地球全体を見渡している)、地球の歴史全体から見たときに、わたし自身にとってはものすごく切迫した重要な問題である今が、地球の歴史(46億年!)のなかではほんの一瞬にすぎないことを思い出される。その気も遠くなるような膨大な時間のなかで、今現在はどのような位置にあるのか。
(手塚治虫の『火の鳥』を読んでると、ひとりひとりの人間の命や物語のちっぽけさみたいなのを感じるんだけど、それにちょっと似てる感じ?)

そういう、目の前から宇宙の彼方まで一気視点をずらす効果があって、その揺らぎみたいな感覚が面白かった。アートのそういうところって素晴らしいなといつも思う。

2. Bandi Rattana(作品名見当たらず)(Old Town6)
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この作品は「ここ、会場?」と戸惑うおんぼろビルの一室に展示されている。会場に入るとまずは絵があり、次に写真がある。どちらの作品も、雑草が生い茂る野原にある大きさの異なる水たまりだか池だかが見える。最初は「一体これ、なに???」とぽかんとしてしまう。

なのだけど、会場のはしっこに映像作品があり、その映像を見ると、その水たまりが何であるかがすぐに理解できる。それらは、アメリカ軍による空爆によってできたもので、その空爆によって地元のひとびとが殺された、という過去がある。

映像作品の中には、限りなくドキュメンタリに近い作品があると思うのだけど、これはまさにそれ。アメリカ軍によるカンボジアの農村への空爆を、地元のひとたちが振り返って語る、という内容。3人の村人たちはそろってみな「なぜアメリカ軍がこんな小さな農村に空爆をする必要があったのか理解できない」という。怒り、悲しみ、絶望、戸惑い。いろいろな感情が伝わってくる。

恥ずかしながらわたしはこの歴史をほとんど認識していなかったのだけど、ベトナム戦争の流れの中で、カンボジアに流れ込んだベトナム軍を襲撃するためのカンボジア作戦といわれる、1970年に行われた軍事行為のことを指してるのだと思われる。

国家間の大きな枠組みの中で決定され、実行されたことが、その地に生きるひとたちに与えた傷はあまりにも大きい。ましては、他国の戦争に一方的に巻き込まれる形であれば、なおさらその理不尽さが際立つ。

作品内には一切この軍事行為への説明的なものはない。あるのは、あくまでなにが、どうして、何のために起きているのか一切知らない/知らされないまま、たとえば目の前で祖母が爆弾に当たってその場で亡くなったり、血を流している家族を必死に救おうとしたり、そういう経験をしたひとたちの言葉のみ。

でも、この作品に出会って沢山の疑問を抱き、このことについて調べだすひとはきっと沢山いるんじゃないかな、と思う。

こうして、ややもすれば「歴史」として忘れ去られていく過去を、そこに生きるひとたちの物語として再構築して、より伝わりやすい形で届け、ときにはひとに行動を促す、というのもアートの大きな力じゃないかな、と思う。

3. Erikan Ozgen(作品名見当たらず)(Old Town2)
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これも映像作品。ここも2に負けずおとらずかなりのぼろぼろのビル。受付のお兄さんが「ここ、探すの難しかったでしょう」と笑いながら声をかけてくれた。

作品が展示されてるのはひとつの部屋の中なのだけど、室内全体が真っ暗。足を踏み入れるとこの男の子の映像がばんと目に入る。男の子は聾唖者で、身ぶり手ぶりで何かを伝えようとしている。最初は、母親に自分の要求や気持ちを伝えようとしているのかな?と思った。男の子の伝えたい気持ちがとても強いのは伝わったのだけど、何を伝えたいのか、全然わからなかった。

でも、そのまま見続けているうちに、次第に彼が訴えていることが見えてきて、ひやりとした冷たいものが全身に走り、鳥肌が立った。「え???」と、思わず声が出た。

銃を構えるようなポーズ。
後ろで手を繋がれたひとが、がくんと首をうなだれ、そのまま床に倒れる。
首のあたりを一気に掻き切るような仕草。
恐怖に見開く表情、そのあと無言で床に倒れこむ様子。

2の作品と同様、映像内ではこの男の子が目撃したもの、経験したことの説明は一切ない。ただただ、何かを伝えようとして、必死にジェスチャーを繰り替えず彼の様子のみが流れてくる。

あとからこの作品の説明文を読むと、彼はトルコ国境線近くのシリアの小さな村の子で、その村はISISとの長期に渡る戦いで注目を集めた場所なんだそう。その戦いの中で、彼はいろいろなことを見たんだろう。

釜山ビエンナレーレの2日間で、もっとも印象に残ったのはすべて最後に駆け足で観たもの。返す返すもくやしい。。。でも、そういうこともある。いろいろな作品が楽しめるのが芸術祭の醍醐味だけど、こうやって何かを突きつけてくる作品がやっぱり特に好きなんだなあと、これを書きながら再確認。書くのに時間がかかったのだけど、書きながら思い出したり考えたりする時間もまた、楽しかった。
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今日は見事に一歩も外に出ず、終日まったり。Netflixで軽めのアメリカンドラマを一気見したり("Emily in Paris")、友人が贈ってくれた本を読んだり。動きがあると静かな1日もゆったり楽しめる。やっぱりある程度日常生活にも動きって必要。。。

さて、釜山ビエンナーレ2020。1.5日かけて周ってきたのだけど、もうちょっとうまく周れていたらなあと思うところもあるので、メモしておこうと思います。

まず、今回の会場は下記の3箇所。

第1会場:釜山現代美術館(부산현대미술관)
第2会場:ヨンド倉庫(영도 창고)
第3会場:旧市街一帯(원도심 일대)

わたしは初日に第2会場、2日目に第1会場→第3会場と周ってしまったのだけど、もう再訪するなら、1→2→3の順で周ります。

第1会場の釜山現代美術館、施設はいいのだけど、かなり辺鄙な場所にあり、釜山駅から45分くらいかかる。展示自体も3フロア分たっぷりあるし、ビデオアートも多いので、時間に余裕をもって元気なうちに廻るのがよし。所要時間はビデオアートとかもしっかり見たら1時間半くらい。
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一方、第2会場のヨンド倉庫と第3会場の旧市街一帯は釜山駅から10〜15分前後とアクセスもよく、両者の距離も同じくらいなので、一緒に周りやすい。

第2会場はかなり小規模でアート作品の数も少なくかつ微妙なのでさくっと終わらせられちゃう。周辺は倉庫が並んでいたり船の修理場があったり対岸に商業港が見えたりとかなり面白く、お散歩する時間も欲しいので、合わせて1時間くらいあれば充分かと(倉庫を改造したお洒落カフェもあるのでそこに寄ってもいいかも)。
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第3会場はエリア内に会場となる建物が7〜8箇所くらい散らばっていてかつ非常に探しにくい!さらに、会場となっている各おんぼろビルの雰囲気もよく、面白い作品も多かったので、たっぷり時間をとりたいところ。わたしは2時間とっても最後は急ぎ足でぎりぎり周る羽目になりとっても残念だった。。このエリアも小さくて感じのいいカフェが密集していてお茶するのも最適なので、3〜4時間多めにとってもいいくらい。
(地下鉄の駅でいうと中央駅から南浦駅あたりに散らばっていて、南浦は洋服のショップや靴屋さんが密集している通りがあって、時間があったらお店をうろうろ見ても楽しそう)
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ちなみにビエンナーレの公式ウェブサイトでは現代美術館は時間指定の事前予約するべしとあったものの、オンライン予約がうまくいかなかったため直接行ったら、理由はわからないけど予約不要でした。あと、会場にはビエンナーレの公式スタッフ?と現地のお手伝いさんスタッフみたいな2種類の人員がいるらしく、後者の方々はチケットや予約制などのシステムをまっっったく理解してなかったので、質問するときは要注意です!

それから、公式ウェブサイトの地図はかなりわかりにくいので、現地に置いてある小さな冊子型のパンフットを見るのをおすすめします(その地図も相当ざっくりではあるんだけど)。

地図を見てもらったらわかるように、会場は釜山駅周辺とそこから西方面なので、短期間でまわる場合ホテルは釜山駅周辺がいいのかも。わたしは移動時間費やしてでも大好きな海雲台エリアに泊まりたかったのだけど、海雲台から釜山駅までは1時間くらいかかっちゃうので、時間に余裕がないときは時間のロスが大きいかも。
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おはようございます。

2泊3日の釜山ひとり旅に行ってきました。楽しすぎた〜。目的は、釜山ビエンナーレ2020を観に行くこと。2012、2014につづき、6年越しで3回目。今回もとってもよかったです。

ひとり旅自体すごく好きで、人生初のひとり旅は大学生の頃で、秋の京都。当時の恋人と喧嘩して、腹立ちまぎれに決めた旅だったのだけど(なつかしい笑)、たまたまタイミングがばっちりで京都の紅葉が本当に美しかった。それ以来いろいろなところにひとり旅してきたけれど、釜山は息子の出産後にはじめてひとり旅した思い出の場所でもあるのでした。

今回のひとり旅は1月のヨーロッパ以来で、9ヶ月ぶり。意気揚々と旅だったのだけど、なぜか道に迷いまくり。行き先自体まちがえて設定しちゃってたり、ちがうバスに乗っちゃったり、時間のロスをしまくりました汗。あと、初日はなんだかすごくさみしかった。特に、お夕飯をどこで食べようかと彷徨っていたときがさみしさ最高潮。でも、予定通りにうまくいかなくてつかれたり、さみしさをじわじわ感じるのも、ひとり旅ならでは。そういうところも含めてひとり旅ってやっぱりすごく好きだし、切実に必要としていた時間だったなあと。

ランナーになってからの初ひとり旅でもあったのだけど、ぜひ海雲台の海を眺めながら走りたいとランニングウェアやシューズなど一式も持参して、2日共朝ランもしてみた。いつもとちがう景色の中を走るのって本当に楽しかった。海雲台にはランナーだけじゃなくてサーファーもいて、朝のひと乗り(っていうのかな?)を終えて、仲間たちとにこにこしながら談笑してる姿がとてもよかった。ランナーになったおかげで、旅の楽しみがもうひとつ増えた。ツアーの仕事に復帰できたら、ツアーで訪れる先々でもランニングしたい。

もうひとつ痛感したのは、旅行中ってものすごく歩くんだな、ということ笑。1日目は15,000歩、2日目は20,000歩、帰るだけだった3日目ですら8,000歩近く。これまで旅行やツアー中の歩行数を測ったことなかったんだけど、無意識にかなりの運動量をこなしていたんだなあと、あらためて。

釜山の街並み、特に海と商業港が大好きで写真を沢山撮ってきたのだけど、わたしは写真の整理が壊滅的に苦手。もっともできないことのひとつかも。。今回もまたそのまま放置になりそうなので(もうあきらめてる笑)、ブログには沢山載せておこうと思います。

<ざっくり旅程>
1日目
・お昼頃、KTXで釜山駅に到着。twitterで知り合った方に中華街のお店に連れて行っていただき、ランチ(美味しく楽しく嬉しい時間!)。

・バスでビエンナーレ第2会場の영도 창고へ。

・徒歩で第3会場の원도심 일대に向かったものの、迷いまくり、断念。翌日まわることにして、海雲台のホテルへ。

・チェックイン後、海雲台をお散歩。
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2日目
・朝、海雲台をランニング。

・バスで第1会場の부산현대미술관へ(いろいろ間違えて1時間で着けるはずが2時間かかった汗)。

・バスで第3会場の원도심 일대へ。

・バスで海雲台に戻り、お夕飯+マッサージ。
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3日目
・朝、海雲台をランニング。

・お昼過ぎのKTXに乗り、ソウルへ。

<釜山の気候と服装>
・最高気温は20〜22度、最低気温は17〜18度くらい。台風の影響で強風の予想。

・初日はヒートテックに薄手のブラウス、薄手のワイドパンツ、薄手のジャケットとストール。夜はブラウスのうえに軽めのトレーナーを重ねた。2日目はTシャツの上にトレーナー、夜は薄手ジャケットとストール。
(ソウルが寒すぎたので寒さ対策していったけれども、全体的にはとてもあたたかく過ごしやすかった)

<持ち物>
(パッキング下手すぎるので旅行の旅に記録つけるようにしてます)
・トップスはグレーのブラウス、黄土色の薄手のハイネック、ブラウンのトレーナー。下は青緑の薄い生地のワイドパンツ。靴はアディダスの白スニーカー(底が厚いやつ)。

・羽織りものはカーキの薄手ジャケットと花柄のストール。防寒具はヒートテックと毛糸のパンツみたいなやつ。

・ランニングウェアとシューズ。

・不要だったのはハイネック、ヒートネックの腹巻きとパンツみたいなの、夜用腹巻き(部屋が暑かった)。本もハードカバーと文庫本持っていったけど、読む時間なかった。
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夏休みは、2泊3日で江原道の麟蹄(インジェ)へ。

豪雨がつづき、行けるかどうかも危ぶまれたけれど、蓋を開けてみれば運良く梅雨の合間の晴天に恵まれた。お庭のプール、野菜畑、渓流、バーベキュー、朝ヨガ、ラフティング。ようやく夏らしい時間を満喫できた。

宿泊したペンションは50〜60代のご夫婦が営まれていて、このおばちゃんが親切心(とお節介)炸裂笑。ウェルカムチヂミ(荏胡麻の葉が入っていて、香りもよく美味しい!)にはじまり、バーベキュー用の葉野菜、茹でトウモロコシ、手作りトマトジュース(びっくりするほど美味しかった。皮を湯むきして、ミキサーにかけ、砂糖をすこしだけ)など、沢山いただいてしまった。野菜はすべておばちゃんの野菜で採れたもので、どれも新鮮でとても美味しかった。庭には梅、桃の木もあったのだけど、特に桃は豪雨でほとんど実が駄目になってしまったらしい。残念。。

友人家族と一緒だったので、旅行中だといつもとちがった顔を見られるのも楽しい。2棟貸切だったのを男女でわけて、布団並べて夜中までおしゃべりしたり。友人のひとりがヨガの先生で、毎朝の習慣だという朝ヨガにおじゃまさせてもらったのも楽しかった。

ペンションには大きな庭があり、はしっこに猫小屋があった。捨て猫を拾ってきたら1ヶ月もしないうちに子猫を産んだらしく、今はお母さん猫と子猫2匹。捨て猫と思えないほどおっとりしてて、ひとが近くにいてもちっとも動じない。3匹とも毛並みがよくて、つやつや。おばちゃん特製の遊び場をかけまわったり、じゃれあってころころ転がる姿がなんとも愛らしかった。

素泊まりだったので、大量の食料を持ち込み、夕食は2晩ともバーベキュー。もうしばらくお肉はいいやというほど、サムギョプサルとモクサルをたらふく食べた。食事は2棟のまんなかにあるデッキでしたのだけど、朝昼晩常に虫が飛び交っていて、大人はすぐ慣れたのに子供たちは最後まで駄目だったのも面白かった(普通逆じゃないかと。。)。

みんなが1番楽しみにしていたラフティングができたのも、嬉しかった。受付をして、ヘルメット、ライフジャケット、パドルを受けとり、バスで20分揺られて川の上流へ。ボートをひっぱって川に入る道が、豪雨の影響で激しくぬかるんでいて、泥に足をとられつつみんな必死。川に入った直後が1番ラフでいきなり激しく揺られて顔がひきつったけれど、その後は終始ひたすら楽しかった。豪雨の影響で川の水位が高く、今回は1番穏やかなコースしか選べなかったのだけど、つぎはもうちょっと流れがラフなコースにも挑戦してみたい。ちなみに行き帰りに使うバスは見事におんぼろ。ラフティング後のびしょ濡れ状態でそのまま座るので、「どうせ濡れるし汚れるからそのままでいいよね」という適当さがいかにも韓国らしくて好ましい。

その日の午前中はペンション周辺でゆっくり過ごしたのだけど、庭にある椅子を倒して、音楽を聴きながら周囲の緑をぼ〜っと眺める時間も最高に幸せだった。歳を重ねるごとに自然にどんどん惹かれるようになっている。木ひとつとっても、よく見てみるととても面白い。じ〜っとひとつずつに視線を集中させると、木によって葉の形も重なり方も色合いも異なる。でもそれらが連なるとひとつの絵のように「木」という存在としてとらえられる。普段は後者の見方しかしていないのだけど、ゆったりした気分でじっくり見てみると、いつもは見えていない差異がくっきりしてくるのがとても不思議。

自宅に帰り家族3人だけに戻るとやっぱりすごくほっとはするのだけど、旅行中の賑やかさやそこらじゅうに溢れていた緑がすでにちょっと恋しい。
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おはようございます。アイルランドでのトレーニング中に時差ボケしていたらつらかろうと、ここのところ時差ボケ防止対策で遅寝遅起きに励んで?います(もともと早寝早起きタイプだしお肌によくないから本当はやりたくないんだけど。。)で、一昨日と昨日は起きたら午前中がほぼ終わっていて1日あっという間でちょっとさみしくなったので、今朝は妥当な時間に目が覚めたからよかったです。今日も着付けの特訓して、あとはパッキングも始める予定。

さて、釜山と博多の美術館・博物館について。

釜山博物館
釜山という土地で古代から脈々とつづいてきた日韓の交流の歴史がすごく興味深かった。院時代の先生のひとりがまさにこのエリアの古代史専門だったのだけど、朝鮮半島南部と九州北部はお墓の形が似ていたり、共通の言語らしきものがあったり、古代はものすごく密接な関係だったらしい。のちに形成されたそれぞれの中央政府よりも、ずっと太く濃い交流が続いてきたんだろうなあと、その話を聞いたときにすごくわくわくしたのを覚えていて。なので、実際にその交流が行われてきた軌跡を博物館の展示を通して追うのはすごく面白かった。

でも、心がひやりとするのは、16世紀の豊臣秀吉による朝鮮侵攻と19世紀の植民地支配の展示を目にしたとき。民間レベルの交流は自然発生的で、その中身は重層的なもの。交流の主な目的や主な担い手も、そのときどきでゆるゆると変わりつづけていく。でも、そこに中央集権政治が確立されたとき、そういった脈々とつづいてきたものを一気にぶったぎるような権力と暴力性が発生する。国家という存在自体が曖昧なものにもかかわらず、たまたまその強大な権力を行使する立場についたものの一声で、国民を総動員できてしまう。その地域のひとたちが何百年かけて築き上げてきたものなんて、一晩で吹き飛ばされてしまう。切ないという形容詞は妥当ではないかもしれないけれども、やっぱりそれってすごく切ないと思ってしまった。

そんな感じで、わくわくしたり興奮したり、ぺしゃんこになったり切なくなったりしながら、じっくり展示見てきました。
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儒教を国家的にとりいれる決定をした時代の、論語の教科書。中1の担任が論語大好きで、暗唱させられたっけなあ。。
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秀吉の朝鮮侵略を描いた絵。古代の日本は朝鮮半島を通してありとあらゆる先進文化をとりいれてきたというのに、その相手に侵略ふっかけるなんて。。秀吉はひとの心を読むのに長けていて異例の出世をしたとのことだけど、どうしたってこのときの決断は理解できない。朝鮮のひとびとの心はどうなるのか。
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朝鮮通信使が日本を訪れたときの書物(たしか。。)
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朝鮮の画家が日本にいって、富士を描いた絵画。
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朝鮮戦争後の写真
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 朝鮮戦争後の復興の様子

国立日帝強制動員歴史館
この日の釜山は朝からどんより曇り空で雨が降ったり止んだりしていて、気温も低めだった。ふたつもハシゴしたあとだったし、宿を移るためずっしり重いスーツケースを転がしての移動。傘も持ってなかったので、小雨だったからずぶ濡れとまではいかなかったけど、全身しっとり湿ってしまっていて。しかもこの歴史館、小高い丘の上にそびえ立つように建っていて、近道を選んだつもりが階段と坂道の連続で、たどり着く道中からちょっと泣きそうになってしまった。

ここは釜山旅行を決めて情報収集するときに見つけて、絶対来なくちゃと思っていて。なのに、このコンディションで心身弱り気味で来てしまったのが、痛恨のミスだった。美術館と博物館ってただでさえ見るのにエネルギーいるから、こっちも元気じゃないと負けちゃう。当然、このコンディションでこのテーマはむりだった。。

とはいえ、せっかくきたんだからと気持ちを奮い立たせて、中に入ってみた。想像以上に冷静なトーンに少し安心するものの、館内は全体的に薄暗くて、ひともほとんどいなくて、それが重苦しい気持ちにさらに拍車をかけて、やっぱりしんどかった。そして、半分もいかないだろうところに日本軍慰安所のコーナーがあり、慰安所で使われていたという避妊具が展示されていた。それを見た途端に気持ち悪くなってしまって、椅子で休んでから残りを見ようと思ったんだけど、どうしてもむりでそのまま出てきてしまった。撃沈。。

文学を読みつづけてきたので、人間は崇高さと醜悪さが同居する生き物だということはわかっている。自分のことを考えたってそれは明らかだし、どんなひとであってもかならず両面を内容しているんだと思う。歴史を見るときも、政治を見るときも、基本的にその視線をもって見るようにしている。なんだけど、やっぱりこの問題には後者がどかんと迫ってきて、いつもこうやってやられてしまう。醜悪さが自分とは無関係ないところにあるものではないからこそ、余計こういう反応が起こるんだろうと思う。。

というわけで、ここは全然見られないままギブアップしてしまったので、またかならず再訪してしっかり見てきたいと思う。 
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歴史館の建物
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朝鮮のひとたちが徴兵されていく際に使われた品物の展示
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強制動員された朝鮮のひとたちの人数は800万人弱(重複もあると記述あり)。労働動員、軍務動員、軍人動員の3種類があったそう。
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動員された朝鮮の労働者の脱走をいましめる朝鮮総督府からのお手紙。脱走したくなる環境だったから脱走したんだよね、っていう。。「産業戦士諸君」って。。
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徴兵された男の子たちの表情の、なんと幼いことか。。。
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 歴史館からの釜山の街並み
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